交通事故による受傷に対する治療が終了し症状固定となり、後遺障害等級が認定された後に、被害者が死亡した場合、問題となるのは、後遺障害逸失利益と介護費用です。

①後遺障害逸失利益について

後遺障害逸失利益とは、後遺障害を負ったことにより、労働ができなくなって収入が減少するために失われる利益のことで、原則として症状固定時から就労可能年数(通常67歳)までの期間について認められます。したがって、67歳以前に死亡した場合には、そもそも死亡以降の労働収入は考えられないところ、死亡以降の逸失利益は認められないのではないか、という問題が生じます。

この点について、最高裁平成8年4月25日判決では、後遺障害等級が認定された被害者が、交通事故とは関係のない事故により死亡した事案(海で貝を採っているときに心臓麻痺で死亡)で、逸失利益の算定後に被害者が死亡したとしても、交通事故の時点で、その死亡の原因となる具体的事由が存在し、近い将来における死亡が客観的に予測されていた等の特段の事情がない限り、死亡後の逸失利益分についても認められる、としています。
この裁判例は、不慮の事故による死亡ですが、事故後に事故とは関係のない理由で自殺した場合にも当てはまると思われます。

②介護費用について

交通事故による受傷により後遺障害が生じ、被害者の介護が必要になり介護費用が発生する場合において、死亡してしまった場合は介護をする必要がなくなるため、死亡以降の介護費用は認められないのではないか、という問題が生じます。

この点について、最高裁平成11年12月20日判決では、逸失利益については死亡以降も認められるとした上で、介護費用の場合は、逸失利益とは異なり、「介護費用の賠償は、被害者において現実に支出すべき費用を補てんするものであり、判決において将来の介護費用の支払いを命ずるのは、引き続き被害者の介護を必要とする蓋然性が認められるからにほかならない。ところが、被害者が死亡すれば、その時点以降の介護は不要となるのであるから、もはや介護費用の賠償を命ずべき理由はなく、その費用をなお加害者に負担させることは、被害者ないしその遺族に根拠のない利得を与える結果となり、かえって衡平の理念に反することになる。」としています。したがって、被害者が死亡した場合には、死亡以降の介護費用は認められません。

なお、被害者が裁判の終了前に死亡した場合には上記の通り介護費用が認められないため、裁判が終了し介護費用を含めた賠償金が支払われた後に死亡した場合に比べて賠償金額が少ないことになりますが、同判決では、右事情は被害者の死亡後の介護費用を認める理由にはならない、としています。

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